女性アスリート健康管理

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女性アスリートが抱える健康問題

女性アスリートの三主徴

アメリカスポーツ医学会では、
・利用可能エネルギー不足
・視床下部性無月経
・骨粗しょう症
の3つを「女性アスリートの三主徴」と定義しています。

激しいトレーニングによって極端なエネルギー不足の状態がつづくと、体を生存させるために生殖機能へのエネルギーが後回しにされてしまいます。そのため卵巣の機能が停止し、無月経や骨粗しょう症を引き起こすケースがあるのです。

利用可能エネルギー不足とは

女性アスリートの三主徴にある「利用可能エネルギー不足」は、トレーニングによるエネルギー消費量に見合ったエネルギーの摂取量が確保されていない状態です。 利用可能エネルギー不足のままトレーニングをつづけるのでは、ガス欠の車を無理に動かしているようなものです。この状態がつづくとパフォーマンスの低下だけではなく、精神面にも大きな影響を及ぶおそれがあります。 特に無月経の原因が利用可能エネルギー不足である場合は、低用量ピルでは治療できません。

トレーニングで消費するエネルギー量と食事からのエネルギーのバランスを知り、食事を通じて月経を取り戻していくのが一般的です。

視床下部性無月経とは

視床下部性無月経は、初経(初潮)がこなかったり、月経が3カ月以上止まってしまうことを指します。ダイエットや過度なトレーニング、それらによるストレスによる無月経は、視床下部からのコントロールが停止して起きるため、視床下部無月経と呼ばれます。

骨粗しょう症とは

本来なら閉経後にリスクが高まる骨粗しょう症ですが、利用可能エネルギー不足と、無月経の状態が長くつづくと、卵巣からの分泌される女性ホルモン(エストロゲン)が低下し、若い女性でも骨密度が低くなり、疲労骨折のおそれが格段に高くなります。
視床下部無月経、骨粗しょう症の原因を辿っていくと、利用可能エネルギー不足に行き当たることも多く見られます。治療ではまず食事によるエネルギーバランスの改善を行い、症状や状態に応じて服薬などの治療を行うのが望ましいでしょう。



正しくピルを活用し、健康的にスポーツを続けていく

日本は女性アスリートのピル活用が遅れがち

海外であれば指導者が女子選手の月経周期などを把握し、ピルなどのホルモン剤を使用した体調管理を行うのは当たり前になっています。もちろんオリンピックなどの国際大会でドーピング違反として扱われることはありません。しかし日本ではまだまだ理解がされておらず、「スポーツをしていると無月経などになるのは普通のこと」と考えている指導者もまれにいるような状況です。

長い選手生命のため、そして将来の自分の体のために

エネルギー不足による生殖機能の低下、ホルモンバランスの乱れなどによって若いうちから骨粗しょう症になり、骨折を繰り返して選手生命を絶たれるケースのほか、低体重が競技場望ましいという誤った考えにより摂食障害や不妊症になってしまうケースも見受けられます。

婦人科は、女性の体と健康、そしてQOL(生活の質)を維持しながら、長くスポーツと適切に付き合っていくための相談窓口としての役割も担っています。 「部活や社会人チームでスポーツをやっていて、無月経や月経不順があるけど、指導者には相談しづらい・家族だと知識がない・誰に相談したらいいかわからない」という方はぜひ、婦人科にご相談ください。



「試合と月経が重なってしまった」はもう古い

女性アスリートが低用量ピルを使用するメリットはいくつか考えられます。

低用量ピルはドーピング違反に当たらない

「低用量ピルを使用するとドーピング違反になるのでは?」と心配される方もいるようですが、低用量ピル(女性ホルモンをコントロールする薬)はドーピング禁止薬物には該当しません。

オリンピック期間中と月経が重なり、急きょホルモン量の高いピルで月経調整を行ったものの、十分なパフォーマンスが発揮できずにメダルを逃した日本人女性アスリートもいます。 欧米の女性アスリートは10代の頃から低用量ピルで月経をコントロールするのが通常です。どの薬なら使えるのかを婦人科の医師にしっかりと確認しましょう。

試合スケジュールに合わせた計画的な服用がおすすめ

低用量ピルの服用は、試合スケジュールに合わせた月経調整など、女性アスリートにとって大きなメリットがあります。
また長期的に服用することで日々の月経が安定し、練習がしやすく、パフォーマンスが維持できることも多いようです。

将来的な子宮内膜症などの予防にも

低用量ピルの服用は月経の移動だけではなく、月経困難症(月経中の不調)、月経不順や月経前症候群(PMS)の改善、子宮内膜症の予防などにもつながります。

ご自身に合った低用量ピルを活用し、充実したアスリート人生を送れるようにしましょう。